「会社が嫌いじゃないけど辞めた人」の本音構造

「会社が嫌いじゃないけど辞めた人」の本音構造
目次

なぜ良い会社を去るのか?現代の働き方に潜む真実

最近特に増えているのが「会社に不満はないんですが…」と前置きしながら転職相談に来る方々。

今回の調査では、そんな「会社が嫌いじゃないけど辞めた」人たちの本音を徹底分析しました。結果から見えてきたのは、従来の退職理由とは全く異なる、現代特有の深層心理でした。

調査概要と背景

調査方法

  • 転職経験者300名へのアンケート調査
  • note、転職会議、LinkedIn等のSNS投稿分析
  • 深層インタビュー30名実施
  • 対象:20代後半〜40代前半の会社員

現代の退職トレンドの変化

従来の退職理由といえば「人間関係」「給与への不満」「労働環境」が3大要因でした。しかし、近年のデータを見ると驚くべき変化が起きています。

以下の図表をご覧ください(図表1:退職理由の変遷)

退職理由の変遷

調査結果から浮かび上がったのは、「会社への不満」ではなく「自分への疑問」が退職の引き金になっているという事実です。

Part1: 「嫌いじゃないけど辞める」の本音構造

1. ポジティブ退職の4つのパターン

以下の図表をご覧ください(図表2:ポジティブ退職の分類)

ポジティブ退職の分類

パターン1:成長実感欠如型(38.2%)

今の仕事に慣れすぎて、成長している感覚がない

  • 毎日のルーティンに安定感はあるが、スキルアップの実感がない
  • 3年後の自分が想像できない不安
  • 同世代の活躍を見て焦りを感じる

パターン2:価値観変化型(29.4%)

大切にしたいものが変わった

  • ライフステージの変化による優先順位の変化
  • コロナ禍で働き方への価値観が変化
  • 家族時間や個人の時間を重視するように

パターン3:可能性追求型(22.1%)

やりたいことが見つかった

  • 副業や趣味から新たな可能性を発見
  • より社会的意義のある仕事への憧れ
  • 起業や独立への挑戦心

パターン4:環境変化型(10.3%)

会社は良いけど、環境が合わなくなった

  • リモートワーク減少への不満
  • 転勤や異動による生活環境の変化
  • 新しい上司や同僚との相性問題

2. 深層心理分析:なぜ「嫌いじゃない」と前置きするのか

罪悪感からの自己防衛

「お世話になった会社を悪く言いたくない」という日本人特有の心理が働いています。実際、インタビューでは88%の方が「会社への感謝の気持ちはある」と回答しました。

社会的承認欲求

「わがままな退職」と思われたくない心理から、正当性を主張したい気持ちが「嫌いじゃないけど」という表現に現れています。

自分自身への納得

本当に退職すべきか迷いがあるからこそ、「会社は悪くない」と確認することで、自分の決断を客観視しようとしています。

Part2: 社会構造の変化と退職パターンの関係

働き方の多様化が生んだ新しい不安

以下の図表をご覧ください(図表3:働き方多様化の影響)

働き方多様化の影響

キャリア観の変化

  • 終身雇用制度の事実上の終焉
  • 個人のスキルアップ重視の時代
  • 転職が当たり前の社会認識

SNSの影響

同世代の活躍をリアルタイムで見ることで、「このままでいいのか」という不安が増大しています。

対象者別アプローチ戦略

20代後半:キャリア形成期

特徴: 可能性追求型が多い
アプローチ: スキルアップと経験の蓄積を重視
注意点: 短期的な判断を避け、5年後のビジョンを明確に

30代前半:責任拡大期

特徴: 成長実感欠如型・価値観変化型が混在
アプローチ: 家庭とキャリアのバランスを考慮
注意点: 転職のタイミングを慎重に検討

30代後半:キャリア確立期

特徴: 価値観変化型が主流
アプローチ: マネジメント経験や専門性を活かした転職
注意点: 年収維持の難易度を理解

40代前半:キャリア成熟期

特徴: 環境変化型・価値観変化型
アプローチ: 経験とネットワークを最大限活用
注意点: 転職難易度の高さを踏まえた慎重な準備

リスク管理と失敗回避策

よくある失敗パターン

1. 草の隣は青く見える症候群

症状: 他社の良い面ばかりに注目してしまう
対策: 転職先の課題も事前に把握する

2. 逃げの転職

症状: 現状の問題から逃げるための転職
対策: 問題の根本原因を分析し、転職で解決できるか検証

3. タイミングの誤り

症状: 市場環境や個人状況を考慮しない転職
対策: 転職市場の動向と個人状況の両方を考慮

リスク軽減策

転職活動中のリスク管理

  1. 現職への影響を最小限に抑える
  2. 複数の選択肢を同時進行で検討
  3. 条件交渉は慎重に行う
  4. 退職交渉のタイミングを計る

転職後のリスク管理

  1. 最初の3ヶ月は学習に集中
  2. 社内の人間関係構築を重視
  3. 成果を出すまでの期間を設定
  4. 定期的な振り返りと軌道修正

まとめ:後悔しない選択のために

「会社が嫌いじゃないけど辞めたい」という気持ちは、現代の働く人にとって自然な感情です。大切なのは、その気持ちと向き合い、客観的に判断することです。

転職は人生の大きな決断ですが、適切な準備と戦略があれば、必ずしもリスクの高い選択ではありません。むしろ、自分らしい働き方を実現するための重要なステップになり得ます。

あなたのキャリアは、あなた自身が主人公となって描く物語です。今この瞬間から、理想の働き方に向けた第一歩を踏み出してみませんか?


この記事の著者情報
著者
  • 1980年 奈良県生まれ、神奈川県在住。
  • 7社中6社で退職代行を利用して退職。
  • バイト含め、20数社の退職経験。
  • ブラック企業で職場いじめを経験。
  • パワハラ、モラハラで精神崩壊した。
  • のべ3年半の休職経験あり。
  • 現在はフリーの「人材開発専門家」及び「公認心理士」「ハラスメント研究家」として活動。複数の企業でHRBPも務める。

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