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企業・組織におけるハラスメント対策の最新動向

職場におけるハラスメント問題は、世界中の企業や組織が直面する重要課題となっています。本記事では、グローバル企業から日本企業まで、最新のハラスメント対策の動向と効果的な取り組みについて解説します。

目次

グローバル企業の取り組み

包括的な職場文化改革

  • マイクロソフトやIBMなどの多国籍企業では「Respect at Work」イニシアチブを導入し、職場文化の根本的変革を目指している
  • 単なるハラスメント禁止ではなく、「インクルーシブな職場環境」の構築を経営戦略の一環として位置づけている
  • 経営層から一般社員まで、全社的な意識改革を促す包括的なプログラムを実施している

「組織文化を変えるには、トップのコミットメントが不可欠です。CEOや経営層自らがハラスメント防止に取り組む姿勢を示すことで、組織全体の意識改革が促進されます」(組織開発コンサルタント・ジェームズ・サットン博士)

傍観者介入トレーニング

  • 「Bystander Intervention Training(傍観者介入トレーニング)」を導入し、ハラスメントを目撃した同僚が適切に介入できるスキルを育成している
  • 従来の「加害者・被害者」という二者関係ではなく、「傍観者」の役割に注目したアプローチが増加している
  • 米国のGoogleやSalesforceなどのテック企業では、全社員に対して傍観者トレーニングを必須化している

実際の研修では、ハラスメント場面を目撃した際の「5つのD」というフレームワークが教えられることが多いようです。

  1. Direct(直接介入):その場で声をかける
  2. Distract(気をそらす):話題を変えるなど状況を変える
  3. Delegate(委任する):上司や人事部門に報告する
  4. Delay(後から対応):その場では難しくても後から被害者をサポートする
  5. Document(記録する):状況を記録し証拠を残す

「ハラスメント防止において、『傍観者』の行動が最も重要なカギを握ります。介入スキルを身につけた社員が増えるほど、ハラスメントは発生しにくくなります」(組織心理学者・リンダ・ウィリアムズ博士)

データ活用とモニタリング

  • 定期的な「Pulse Survey(パルスサーベイ)」を実施し、組織内のハラスメントリスクを可視化する取り組みが広がっている
  • AI技術を活用した「People Analytics(人材分析)」により、ハラスメントの予兆を早期に発見する試みも進んでいる
  • 匿名レポートシステムを導入し、被害申告のハードルを下げる工夫をしている企業が増加している

アメリカのユニリーバ社では、社内チャットツールの分析から「有害なコミュニケーションパターン」を特定し、部署ごとのハラスメントリスクを予測するシステムを開発しました。このシステムにより、問題が顕在化する前に予防的な研修を実施することが可能になっています。

グローバルスタンダードの確立

  • 多国籍企業では、国による法律や文化の違いを超えた「グローバルハラスメントポリシー」の策定が進んでいる
  • 最も厳しい国の基準に合わせた「上方調和」により、世界共通の高い水準での対策を実施する企業が増えている
  • 「Respect Ambassadors(リスペクト・アンバサダー)」など、各国・地域での啓発役を配置する仕組みも広がっている

「グローバル企業にとっては、国によって異なるハラスメント対応の基準を統一することが重要な課題です。特に『グレーゾーン』をいかに明確にするかがカギとなります」(国際労働法専門家・マリア・ゴンザレス教授)

報告・対応プロセスの透明化

  • 「Speak Up Culture(声を上げる文化)」の醸成に力を入れる企業が増加している
  • 報告から調査、対応までのプロセスを明確化し、社内に公開している
  • 調査結果や対応策について、プライバシーに配慮しつつ一定の情報公開を行うケースも増えている

米国アパレル大手のパタゴニア社では、ハラスメント通報後の「対応の流れ」を図式化し、全社員に共有しています。また通報者へのフィードバックを徹底し、「言っても無駄」という諦めを防ぐ工夫をしているのです。

日本企業の課題と展望

法的枠組みの変化

  • 2020年の「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)施行により、企業に対するパワーハラスメント防止措置が義務化された
  • 2022年には中小企業にも適用が拡大され、すべての企業がハラスメント対策を講じる必要が生じている
  • セクハラ・マタハラなど他のハラスメントと合わせた「包括的ハラスメント対策」が求められるようになっている

形式から実質へ

  • 「パワハラ防止法」施行により制度面は整いつつあるが、「ハラスメント相談窓口が機能していない」という課題が多くの企業で見られる
  • 単なる方針表明や研修実施にとどまらず、実効性のある対策が求められている
  • 経営層の本気度が問われる段階に入っており、「コンプライアンス」から「企業価値向上」への視点転換が重要になっている

「日本企業のハラスメント対策の課題は、『形式的な対応』にとどまりがちな点にあります。真の意味で組織文化を変革するには、管理職の評価項目に『ハラスメント防止』を明示的に組み込むなど、実質的なインセンティブ設計が必要です」(労務管理専門家・高山直樹教授)

相談・通報体制の課題

  • 欧米企業と比較して「匿名通報制度」の整備が遅れており、被害者が声を上げにくい環境がある
  • 相談窓口の担当者のスキル不足や、相談後の適切なフォローアップ体制の不備が指摘されている
  • 加害者とされた社員への過度な処分を恐れるあまり、問題を矮小化する傾向も見られる

日本労働組合総連合会(連合)の調査によると、職場でハラスメントを受けた労働者の約7割が「相談しなかった」と回答しています。相談しない理由として「相談しても解決しないと思った」「不利益な取扱いを受けると思った」という回答が多く、相談体制への不信感が浮き彫りになっています。

先進的な日本企業の取り組み

一方で、先進的な取り組みを行う日本企業も増えてきています。

  • 資生堂:「リスペクトフル・ワークプレイス」を掲げ、ハラスメントだけでなく、多様性尊重を含めた包括的な職場環境改善を推進
  • ユニリーバ・ジャパン:外部の専門家を含めた相談窓口の設置や、定期的な社内風土調査を実施
  • サイボウズ:「心理的安全性」を重視した組織づくりの一環として、ハラスメント防止を位置づけ

外資系企業との対応格差

  • 外資系企業の日本支社では「グローバルスタンダード」の導入が進み、日本企業との対応格差が生じつつある
  • 特に調査プロセスの透明性や、加害者への対応の厳格さに違いが見られる
  • 日本のグローバル企業は、国内基準と国際基準の狭間で対応に苦慮するケースも多い

「日本の職場文化とグローバルスタンダードの間にはまだギャップがあります。特に『空気を読む』文化の中で、明確なコミュニケーションを求める外資系のアプローチは浸透に時間がかかります」(異文化経営コンサルタント・鈴木明子氏)

効果的なハラスメント対策のポイント

1. 予防的アプローチ

  • ハラスメント発生後の対応だけでなく、予防に重点を置いた取り組みが効果的
  • 定期的なリスクアセスメントにより、ハラスメントが発生しやすい状況や部署を特定
  • 心理的安全性の高い職場づくりを基盤とした予防策の実施

アメリカの労働心理学者チームの研究によれば、心理的安全性の低い職場ではハラスメントの発生確率が3倍以上高くなるという結果が報告されています。

2. 研修プログラムの革新

  • 従来型の「禁止事項の列挙」だけでなく、ロールプレイやケーススタディを活用した体験型研修が効果的
  • 管理職向けには「部下との適切な距離感」や「フィードバックの伝え方」など、実践的なスキルトレーニングを実施
  • 定期的な研修よりも、「昇進時」「異動時」など、役割変化のタイミングでの研修が効果的という研究結果も

「ハラスメント研修で最も重要なのは、『これはダメ』という禁止事項ではなく、『どうすれば良いか』という代替行動を具体的に示すことです。特に管理職には実践的なコミュニケーションスキルを教えることが効果的です」(組織行動学者・サラ・ジョンソン博士)

3. 同僚間サポートの促進

  • 「Peer Support System(ピアサポートシステム)」の導入により、被害者が最初に相談しやすい環境を整備
  • 同僚同士で適切な介入方法を学ぶワークショップの実施
  • 「Ally(アライ)」の概念を取り入れ、支援者としての意識を高める

4. リモートワーク時代の対応

  • オンライン環境でのハラスメント(例:ビデオ会議中の不適切な発言、チャットでの嫌がらせなど)への対策
  • 「デジタルエチケット」の策定と周知
  • 在宅勤務中の「連絡の頻度」や「業務時間外の連絡」などに関するガイドラインの整備

コロナ禍以降、リモートワーク環境での新たなハラスメントの形態も報告されています。例えば「常時ビデオをオンにするよう強制する」「深夜のメッセージに即時返信を求める」などが問題視されています。

5. 評価・報酬制度との連動

  • マネージャーの評価項目に「ハラスメント防止」や「心理的安全性の構築」を明示的に組み込む
  • エンゲージメントサーベイの結果を管理職の評価に反映させる
  • ハラスメント撲滅に貢献した社員を表彰するプログラムの実施

米国のセールスフォース社では、マネージャーの評価において「心理的安全性スコア」を重要指標として採用しており、部下からの評価によってボーナスが変動する仕組みを導入しています。

今後の展望

テクノロジーの活用

  • AIを活用したハラスメント検知システムの開発が進んでいる
  • VR(仮想現実)を用いたハラスメント体験研修により、加害者・被害者の双方の視点を体験できるプログラムも登場
  • ブロックチェーン技術を活用した、改ざん不可能な「ハラスメント報告システム」の実験も始まっている

「テクノロジーはハラスメント対策に革命をもたらす可能性があります。特にAIによる監視は慎重な導入が必要ですが、適切に活用すれば予防効果は大きいでしょう」(デジタル倫理学者・トーマス・レイク博士)

世代間ギャップへの対応

  • Z世代・ミレニアル世代とベビーブーマー世代では、ハラスメントに対する感覚が大きく異なる
  • 若年層が「ハラスメント」と感じる行為を年配層が「指導」と捉えるなど、世代間の認識ギャップが課題となっている
  • 「世代間ダイアログ」など、異なる世代が互いの価値観を理解する機会の創出が重要になっている

国際標準化の動き

  • ISO(国際標準化機構)では、職場のハラスメント対策に関する国際規格の策定が検討されている
  • グローバルに事業展開する企業にとって、国際的に通用する基準の確立は大きな意味を持つ
  • 特に「サプライチェーン全体での対応」が求められる時代に入りつつある

社会的責任投資(ESG)との関連

  • 投資家が企業評価の際に「ハラスメント対策」を重視する傾向が強まっている
  • 特にS(社会)の要素として、従業員の心理的安全性やハラスメント対策の充実度が問われるようになっている
  • ハラスメント問題の放置が企業価値の毀損につながるリスクへの認識が高まっている

まとめ

企業・組織におけるハラスメント対策は、単なる法令遵守の問題から、企業価値や競争力に直結する経営課題へと変化しています。先進的な企業では、「禁止」や「処罰」という消極的アプローチから、「心理的安全性の構築」「インクルーシブな職場づくり」という積極的アプローチへの転換が進んでいます。

日本企業においても、形式的な対応から実質的な組織文化改革へと舵を切る企業が増えており、ハラスメントのない職場づくりが人材獲得・定着の重要な要素となりつつあります。経営層の本気度が問われる中、先進的な取り組みを積極的に取り入れることが、今後の企業競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

「ハラスメントのない職場は、単に法的リスクを回避するだけでなく、イノベーションと生産性を高める基盤となります。心理的安全性の高い組織づくりこそが、次世代の企業競争力の源泉となるでしょう」(経営学者・ロバート・サザーランド教授)


この記事の著者情報
著者
  • 1980年 奈良県生まれ、神奈川県在住。
  • 7社中6社で退職代行を利用して退職。
  • バイト含め、20数社の退職経験。
  • ブラック企業で職場いじめを経験。
  • パワハラ、モラハラで精神崩壊した。
  • のべ3年半の休職経験あり。
  • 現在は「ハラスメント研究家・いじめカウンセラー」及び「人材開発専門家」として複数の企業でHRBPも務める。

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