転職実践マニュアル
イジメ・ハラスメントでお悩みの方へ
退職ラボの調査研究レポート

あなたは、自分の意見をなかなか言えずに、後で後悔した経験はありませんか?あるいは、自分の意見を主張しようとしたら、つい攻撃的になってしまい、人間関係をこじらせてしまったことは?
「相手に気を使ってばかりで疲れる」「言いたいことが言えずストレスが溜まる」「どうせ言っても無駄だと思ってしまう」――。こうした悩みは、ハラスメントがはびこる現代社会において、多くの人が抱えているコミュニケーションの課題です。
私たちはこれまで、数多くのハラスメント事案に立ち向かい、その中で、「適切な自己主張の欠如」が、被害者にも加害者にもなりうるリスクを高めることを痛感してきました。言いたいことを言えないことでストレスが蓄積し、結果的に不適切な形で感情が爆発したり、逆に相手に不満を伝えることができず、不満の捌け口としてハラスメントに繋がるケースも少なくありません。
そこで今回、皆さまにご紹介するのは、自分も相手も尊重しながら、率直に自分の意見や感情を伝えるための強力なスキル、「アサーティブコミュニケーション」です。この手法を身につければ、不必要な衝突を避けつつ、健全な人間関係を築き、ハラスメントのない環境を自ら作っていくことができるでしょう。
さあ、この実践ガイドを読み進めてみてください。きっと、あなたのコミュニケーションに確かな自信と、新たな変化が訪れるはずです。
アサーティブコミュニケーション(Assertive Communication)は、「自分自身の権利や欲求、意見、感情を、相手のそれを尊重しながら、率直かつ正直に、そして適切に表現する」コミュニケーションスタイルです。1950年代にアメリカで提唱され、以降、人間関係の改善やストレス軽減のための重要なスキルとして広まりました。
アサーティブネスは、以下の3つのコミュニケーションスタイルとは一線を画します。
アサーティブコミュニケーションの目的は、常に自分の意見を主張し続けることではありません。状況に応じて、自分の意見を明確に伝えたり、相手の意見に耳を傾けたりする柔軟性も持ち合わせています。
現代社会において、ハラスメント問題は根深く、その背景には、コミュニケーションの不均衡や歪みがあることが少なくありません。アサーティブコミュニケーションは、ハラスメントを未然に防ぎ、健全な人間関係を築く上で、極めて重要な土台となります。
いじめカウンセラーとしての経験から言えるのは、いじめの被害に遭いやすい子どもの中には、自分の意見を表明することにためらいを感じる子が多くいるということです。アサーティブコミュニケーションは、子どもたちが自身の権利を認識し、いじめの芽を摘むための大切なスキルとなります。
また、相手の感情に配慮しつつ対話を進めるには、以前解説した「非暴力コミュニケーション(NVC)」の考え方が非常に役立ちます。そして、感情的になりやすい方は、「アンガーマネジメント」で怒りの感情をコントロールする方法を学ぶことも、アサーティブなコミュニケーションには不可欠です。これらのスキルは、互いに補完し合う関係にあります。
ここからは、アサーティブコミュニケーションを実践するための具体的なステップを解説します。
アサーティブな主張をするための効果的なフレームワークとして、「DESC法(デスク法)」があります。これは以下の頭文字をとったものです。
このDESC法を念頭に置くことで、感情的にならず、論理的かつ尊重的に自分の主張を伝えることができます。
日常のコミュニケーションにおいて、自分がどのスタイルに陥りやすいかを意識することから始めましょう。
まずは、自分のコミュニケーションを客観的に観察し、アサーティブな表現を練習する習慣をつけましょう。
自分の感情や意見を伝える際に、相手を主語にした「あなた(You)メッセージ」(例:「あなたはいつも〇〇だ」)を使うと、相手は非難されたと感じ、反発しやすくなります。代わりに「私(I)メッセージ」を使うことで、自分の感情や視点を伝えつつ、相手を責めることなく話を進められます。
「ノー」と言うことは、自分の権利を尊重する上で非常に重要です。しかし、相手を傷つけたくないという気持ちから、なかなか言えない人も多いでしょう。
言葉だけでなく、非言語コミュニケーションもアサーティブな主張には不可欠です。
適切な自己主張(アサーティブコミュニケーション)は、ハラスメントのない健全な関係性を築く上で、まさに必須のスキルです。それは、自分を犠牲にすることなく、また相手を傷つけることもなく、お互いを尊重しながら対話を進めることを可能にします。
この記事でご紹介したDESC法や「私(I)メッセージ」の活用、そして「ノー」の伝え方といった具体的な実践方法は、今日からでもあなたのコミュニケーションを変える力を持っています。もちろん、すぐに完璧にできるわけではありませんが、日々の生活の中で意識的に実践し続けることで、きっとあなたのコミュニケーションは大きく変化し、より自信を持って人と関われるようになるでしょう。
自分らしく、そして周りの人々とも心から繋がり合える豊かな人間関係を築くために、今日から「アサーティブコミュニケーション」をあなたの日常に取り入れてみませんか?
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